IT系でよく使う「経営者」「マネージャ」「ディレクタ」「プロデューサ」というチョット意味不明な役職を「戦争」に例えて説明する

説明をスタートする前に、戦争において「戦術」と「戦略」の違いをご存じだろうか?とりあえずウィキペディアの「戦術と戦略」ご覧いただきたい。

以下「ウィキペディア – 戦術 – 戦術と戦略」項より抜粋

戦略と戦術を明確に区分分けする事は出来ないが、概念上は区分されるべきものである。戦略は戦役全体での勝利を収める為に指導する術策であり、[32]戦術は戦場において実際に敵に勝利するために戦闘部隊を指揮統制する術策である。つまり戦略は大局的な観点から目標設定の整合性や他方面の状況などを調整した巨視的な術策であって、戦略上の都合によって採りうる戦術に制約が生じることはありうる。
戦略と戦術の類似点をいくつか挙げることは出来る。両者ともに目標達成の手段という共通の性質を持ち、また戦略・戦術は共に一般的な理論であると同時に特殊的な術である。初心者はしばしば戦略を理論、戦術を実践として誤解するが、双方とも理論と術を併せ持っている。加えて情勢判断に基づいた戦力準備・戦力運用・教育訓練が三位一体となって目標達成を追求するという基本的な枠組みも類似している。[* 防衛大学校・防衛学研究会編『軍事学入門』(かや書房、2000年)144項より]
戦略と戦術の異なる点も挙げることが出来る。それは戦略と戦術が上下関係に属していることと関係して、考慮すべき問題の大小、配慮すべき時間の長短、視野の広狭などが決定的に異なっている点である。また戦略家・戦術家の思考様式の差異であり、戦術家としての役割を担う下級指揮官は一定の条件下で与えられた任務を達成するために判断すればよいが、戦略を担う高級指揮官は下級指揮官に任務を与える場合に必要な戦力を与えなければならず、また常に全体的な状況を把握して指導することが重要である。[* 防衛大学校・防衛学研究会編『軍事学入門』(かや書房、2000年)145項より]
また戦略・戦術の概念は近代以降に精緻化が進み、戦略は国家戦略、軍事戦略、作戦戦略に構造化されている。[* 防衛大学校・防衛学研究会編『軍事学入門』(かや書房、2000年)141項](戦略を参照)また作戦的な性格と戦闘的な性格から戦術を作戦術と戦術に区分する場合もある。

とある。このことを簡単にするために、ここでは、戦場という現場で行う術を「戦術」、戦場以外で行う術を「戦略」と定義する。厳密には違うかもしれないが概ね間違ってはいないはずだ。

まずは「経営者」から説明していく。

経営者の役割はとは戦争をする(つまりプロジェクトを行う)に当たって「どうなれば勝利なのか」「どうなると敗北なのか」「戦うことによって何を得るのか」を定義することだ。つまり目的を明確に定義することに尽きる。目的を達成するための手段や方法を考えるのは経営者の仕事ではない。経営者は戦略も戦術も定義してはならない。その役割は他者に任せなければならない。

次に「プロデューサ」について。

プロデューサの役割は、経営者が定義した目的を達成するための「戦略」を練ることだ。戦略の中でも「勝つための戦略」という攻撃的(オフェンシブ)な戦略を考える役割を担っている。したがって、プロデューサはリスクを恐れず打って出て、戦うことにより得られる目的を最大化することを考える。従って正面突破が難しいようなのであれば奇抜な策を提案することもあるし、十中八九勝てて、だれがやっても最大の効果が得られる勝ち戦ならばプロデューサの出番は少ないだろう。プロデューサはその役割の性質上目立つ。どのような職種においてもプロデューサが派手に見えるのはそのためだ。

「マネージャ」について説明する。

マネージャはプロジェクトを進めるにおいて、また戦う組織を維持運営する場合においてもっとも重要な役割を担う。マネージャもプロデューサと同じく「戦略」を練ることを役割としている。しかしプロデューサとは視点が違い「負けない戦略」という防衛的(ディフェンシブ)な戦略を考案するのがマネージャの最も重量な役割だ。戦争においても仕事上のプロジェクトにおいても、勝てなくても負けなければよいのだ。現実での戦いというのはゲームのように勝ち負けだけのゼロサムゲームではない。勝てないとわかっていても戦わなければならないことが往々にしてある。その時に「負けない戦略」が非常に重要になってくる。逆に、いくら勝てそうな相手だからといっても、どんな不測の事態が起こらないとも限らない。相手の戦力や戦略、戦術の予測を見誤っている可能性もある。それらのリスクをあらかじめ予見して、もしもの時を考え、被害を最小限に抑える方策をあらかじめ立てて置き、必要とあらば躊躇なく防衛的な戦略を発動させるのがマネージャの仕事だ。つまり、自組織を永続させることがマネージャの最も重要な役割と言い換えてもいい(戦って勝ったとしても自身がボロボロで再起不能ではそれは負けたに等しい)。さらに加えると「マネージャ」の重要なもう一つの役割として、戦線を維持して戦力を常に最高の状態に保つための兵站(ロジスティクス)を整備することも「マネージャ」の大きな役割だ。なお、現在のアメリカ軍では軍事作戦費用の50%以上をロジスティクスに費やしている。「マネージャ」はそれだけ重要な役割を担っている。

そして最後に「ディレクタ」だ。

もちろんディレクタは戦術を担当する。経営者が戦闘(仕事上で言えばプロジェクト)の目的を定義し、それに沿った戦略をプロデューサとマネージャが立案、準備をする。その戦略を受けて戦場で最も効果的に、かつ効率的に結果を出すために指揮を取る。つまり、戦場において、与えられた人的、物的資源(リソース)を最大限有効活用して戦略を具体化して目的を達成させるのがディレクタの役割だ。

なお、筆者の個人的主観だが、第二次世界大戦の日本軍には「マネージャ」職が欠落していたように思う。逆に「プロデューサ」と「ディレクタ」職は非常に優秀な人間が多かった(ロジスティクスが互角であった場合、総合すると日本軍は勝っていたそうだ)。つまり、勝つための戦略は立てられるが、物量に勝る相手に対して「負けない戦い」ができず自身がボロボロとなり再起不能となった。それを顧みず戦いを続けた結果が第二次世界大戦の結果につながったと思っている。もし当時の日本軍に優秀な「マネージャ」職が存在していて、「プロデューサ」と「ディレクタ」と同等かそれ以上の発言力があったとしたら、いまの歴史は大きく変わっていたはずだ。

この説明では仕事上のプロジェクトの役職を戦争に例えて説明してみた。「戦争とビジネスは全く違う」と反論される方もおられるだろう。しかし、現在主流のプロジェクトマネジメントの源流は、戦争大国アメリカでの戦争理論からきている。また、完全な戦争論であるランチェスターの法則を取り入れた企業が結果を残しているのは、戦争とビジネスが非常に似通った行為であることを如実に示している。

いかがであっただろうか?身近なプロジェクトに照らし合わせるとこの説明は非常にしっくりくるはずだ。そして、うまく回っているプロジェクト、成功したプロジェクトをみると、この役割がぴったり当てはまっていることが多いのではないかと思う。

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